FUKUYA SPORTS NIIHAMA - フクヤスポーツ新居浜 久保田スラッガー特約店 ミズノ取扱店 K-KLUB

グラブをいかに手のひらに近づけるか

サスタメニ、テノヒラデトル。

名人江頭重利の言葉が、数多くの名手と呼ばれる選手の心を打った。
福良淳一、辻発彦、小川博文、・・・
湯もみ型付けというのは、ただ柔らかくするのが目的ではない。手のひらの中心で取れば、すばやく投げることが出来るという単純だが奥の深い理論を実現するために、グラブを手のひらに近づける。
取る、投げる、さばく。選手ひとりひとりが、どのようなボールを掴み、どのように投げるのかを考えながらグラブに型をつける。
名人の思いを受け継ぎ、鉄人がグラブに魂をこめる。

守るグラブから攻めるグラブに変える

野球という戦いの場において、グラブとはどのようなシーンで使われるのか。
そして、どのような使命をおびているのか。
名人江頭重利の言葉を借りれば、

グラブは取る為の道具ではなく、
送球する為の道具

である。
そのために、ヒモの通し方ひとつにしても、独特のノウハウが存在する。 緩める部分、締める部分。
工場の流れ作業では伝わらない思いを、ひとつひとつグラブに教え込む。

名手松井稼頭央が使った、究極の手のひら捕球グラブとは

西武ライオンズに在籍した最後の03年シーズンに、松井稼頭央内野手が使用した久保田スラッガーのグラブ。
一シーズンしか使用していないのに、捕球部はボロボロの状態になっている。
どんなグラブにでも表革と裏革をくっつけるため、手のひら部分の中側にボンドの役割を果たすグリースが塗られている。
このグラブは、ボールを受け続けたことによって、そのグリースが捕球面ににじみ出た状態である。
松井稼頭央選手が手のひら部分でいかに捕球し続けたかが、一目瞭然。

1.湯もみ型付け加工済
『ただお湯に入れて、揉んで、叩くだけはない』

工場から届いたグラブを、分解し、チェックし、そして名人直伝のレースパターンで再形成する。そして、『五段階湯もみ』
新品のグラブでは硬くてとても捕球に使えない手のひら部分。グラブにとってはここが扇の要。この部分を柔らかくし、使える様にすることで浅く大きく使えるグラブになる。

2.指又部分の紐間隔
『手のひらイメージ』

手のひらにグラブを少しでも近づけるために、写真のグラブの様に人差指と中指の先端部分のレースを少し緩めている。
そうする事によって、グラブを大きく使うことが出来るようになり、ボールを補球する確率が高くる。また、グラブが大きく開く事により、ポケットが浅く使える様になる為、ボールを掴んで送球する際、スムーズにる。
指又部分のレースを締め付けているグラブをよく見るが、 締めれば締めるほど、ポケットが小さいグラブになる。

3.捕球に返事をくれるグラブ
『手のひらでボールを捕ると手がすごく痛いのですが?』

捕球の間隔を手のひら部分に設定しながら、ボールを掴みに行くときに、ゴロがイレギュラーするなど、不測のプレーのときに捕球スポットの周りに予期せずボールが当たってくれることもある。
逆に、グラブの先端に捕球の感覚を設定して掴みに行くと、捕球スポットの先にボールが当たるスペースがないので、捕球する確率も低くなる。
不測の打球もアウトにできる。
『捕球の痛みを知るプレーヤーこそ、名手』なのだ。

4.最適な捕球スポット
『最高の捕球感』

中指の付け根部分を中心にしたところ、写真の黒くなっているところが理想的な捕球スポットでえる。大きな手でも、小さな手でも、スポットでボールを掴めばしっかりと掴むことがでる。右手へのボールの持ち替えが堅実にできるスポットでもある。一瞬のプレーで魅せる野手は特に送球するまでの時間を短縮する事により、ゲッツーや三遊間への深いゴロを処理するときなど、ギリギリのタイミングのプレーをアウトにできる。
まさに、サスタメニテノヒラデトル

革と対話する-湯もみ型付けの工程

その1. 湯もみ型付け前

工場から出来上がってきたばかりのグラブ。
型も悪く、紐の通しや、結び目もバラバラである。
このままの状態では、手のひら部分の革が硬く、本来ポケットとして使うべき部分では補給するのが難しい。
革紐の間隔や締め具合、良いグラブの選別は、数多くのグラブを手にしてきた者にしか解らないだろう。
まずは手を入れ、型を見る。ここから鉄人の型付けが始まる・・・。

その2. グラブの分解

ただ湯につけて揉むだけじゃない!
親指部分と土手部分のレースをほどき、中の芯を取り出す。
そして、グラブの受球面と裏革の内側にボンドの役割を果たす、 グリースの状態をチェックする。
グリースの量や塗り範囲、グリースの鮮度・状態が悪ければ全て除去し、フレッシュな湯もみ専用のグリースを塗り直す。
取り出した芯はこの時点で加工し、またオリジナルのレースパターンで元の状態に戻す。

その3. 湯につける

何故、お湯なのか!
グラブに水分を吸収させ柔らかくするため、お湯につける。
水では革に形状をなじます事が出来ない。
お湯につける時間や温度は蘊奥にて口外無用。
革は非常にデリケートなので、この湯につける作業により、出来栄えを大きく左右する。
湯とつける時間が長すぎたり、温度が高すぎたりすると、革が傷む原因となる。

その4. 揉む

ポケットのまわりを包み込むように揉んでいく。
全体重をかけて丹念な作業が続くが革の種類によって違ってくる。
理想の捕球スポットを獲得するために、常に捕球を意識しながら、揉み込んでいく。
力仕事だけではない、鉄人の感覚が問われる作業だ。

その5. 叩く

革は叩くことで伸び、柔らかくなる。
叩き伸ばした革は元には戻らないため、叩く力加減や回数も、グラブの声を聞きながらの作業。
一発一発に力を込め、捕球スポットとなる手のひら部分を主に、そのグラブのくせを柔らげ、右手の感覚だけで行われる、鉄人ならではの技!!
出来上がりの型が、ほぼ、ここが決め手となる為、鉄人の手も一段と力が入る。

その6. 乾燥させる

グラブの型を再び記憶させる作業。
お湯につけて、革が湿気を保った状態のままでは革が傷んでしまうので乾燥し湿気を抜く。乾燥の時間も革の状態を見ながらすすめるが、長い場合は2日かかる場合もある。
湿って伸びた革をゆっくり締めてゆき、完全に乾かす事で鉄人の型付けが記憶される。
中途半端な乾燥では、革も死ぬが、鉄人の技も死ぬ。
グラブの革質も把握し、強制乾燥や自然乾燥など方法を変え、そのグラブに合った最高の型づくりこそが鉄人湯もみ型付けの根元ではないだろうか・・・。

その7. スチームをあてる

革にとって水分は天敵だが、乾燥しすぎた革も強度が落ちる。
常に適度な状態を保っていなければならない。
スチームを当て過ぎても、革紐が傷み過ぎてしまう。
完成間近である為、最後の最後まで気が抜けない。

その8. 仕上げ調整

鉄人手作りの調整棒を使い、手入れ部分の角度・幅・指入れ部分の広がりや角度最終的な微調整を行う。
湯もみしたグラブの最高の手当たりを出す為には、絶対不可欠な作業である。

その9. 完成

再度、揉む・叩く作業を状態に応じて行い、捕球スポットに鉄人お薦めのオイルを塗る。
扇の要と同じで、グラブを広げるためには受球部分(ポケット)を柔らかく作り込む事が重要である。
ここが動かないグラブは、捕球スポットが一点になってしまい、ゴロがイレギュラーするなど、不測のプレーのときに捕球の確率の低いグラブになってしまう。